竜馬はあるときに亀山社中を解散せざるをえないと判断して、陸奥陽之助につぎのようにいった。
「『水夫火夫の賃金がはらえぬ。この先、払えるめども立たぬ』
『さすがの坂本さんも万策つきたとみえますな。私は天下に、こまらぬ男というのは長州の高杉晋作とわれわれの坂本竜馬だけだと思っていたが、これはちがったな』
『なんだ、そのこまらぬ男というのは』(中略)
『まるで雲に乗った孫悟空ですよ。雲から落ちて絶対絶命に立ちいたっても、ふたたび雲を呼んでまた三千世界を駆けめぐる。二千年来の英雄児ですな』(中略)
困った、といったとたん、人間は知恵も分別も出ないようになってしまう。
『そうなれば窮地が死地になる。活路がみいだされなくなる』というのが高杉の考えだった。
『人間窮地におちいるのはよい。意外な方向に活路が見出せるからだ。しかし、死地におちいればそれでおしまいだ。だからおれは困ったの一言は吐かない』と、高杉は陸奥にもそう語っていたという。」『竜馬がゆく(7)』(司馬遼太郎著)
窮地や剣道などのように極地に立ったとき、人は知性を超えて霊性を呼び起こす。霊性が知性に働きかけることで意外な方向に活路が開ける。こういう体験をしている人でさえ、私の時代には、すべてを知性で乗り切ろうとしてきました。しかし、いよいよ、霊性が中心になる時代がきたとおもうのです。
いっぽう、「ゾーン」体験についてインタネットのウィキペディアを見てみましょう。
「ゾ-ン体験とは、スポーツ選手が、極度の集中状態にあり、他の嗜好や感情をわすれてしまうほど、競技に没頭しているような状態を体験する特殊な感情のことです。
単に調子がいい、とても集中している、というだけでなく、『心と体が完全に調和した無我の境地だった』『体が勝手に動き、苦痛を感じなかった』『試合をやっている自分を上空うから眺めていた』など、選手にとって『なにか特別なことがおこった』と感じさせるような感覚です。」
そしてゾーン体験に導くメンタルトレーニングを次のように紹介しています。まずレゾナンス(resonace)呼吸、すなわち同調です。そして、ヨガ・座禅・瞑想です。自分の心に生じるストレスから離れ、宇宙に同調します。これらは知性で教えることのできないもので、自分で体験するしかありません。先日紹介した「霊操」もそうです。
この「ゾーン体験」と竜馬の話がどう関係があるのだと言われそうですが、知性で行き詰るときに、それであきらめてしまえばたしかに行き詰まります。しかし、宇宙に同調して霊性が働けば意外な方向に活路が開けます。ヨガ・座禅・瞑想・ゾーン体験・霊操もすべて宇宙に同調するということです。
『竜馬がゆく(7)』(司馬遼太郎著)に次のようなことが書かれています。
幕府や藩にとらわれなくなった土佐藩の人が「私は地球の上にいますので」ということばを流行らせた。
いまその地球がひとつになって動いています。これからは、「私は宇宙の中にいますので」ということばになるでしょう。宇宙の創造主につながり、創造主と同調して生きることで、無上の喜びを味わうでしょう。